屋外看板に関する法令・条例とデジタルサイネージ

屋外看板はどこでもあなたが好きな場所に設置できるわけではありません

人通りの多いこの場所に屋外看板を設置して集客したい!屋外看板を設置するなら、人通りが多くて目立つ場所に設置したいですよね。 でも、屋外看板はどこでもあなたが好きな場所に設置できるわけではありません。屋外看板は法令を守って設置しなければならないのです。
  • 人通りの多い場所にある電柱に張り紙
  • 通行量の多い市街地のガードレールにのれんを掲示
  • 神社の境内にある樹齢300年の木に立て看板を設置
これらは広告効果ありそうですが、全部NG(法令違反)です。 法令違反の屋外看板が発見されるとどうなるか・・・ 市や県などから撤去命令がきます。 それでも無視していると、 行政の長によって強制撤去されてしまい、しかもその撤去費用を請求されることになってしまいます。大型の屋外看板なら通常は業者さんに設置依頼をすると思うので、こんなことにはなりませんが、 電柱に勝手に広告を貼ってまわったという場合、これは法令違反になってしまいます。ここでは、屋外看板を設置する際に気をつけなければならない法令をわかりやすくお伝えします。 法令や条例の条文ってホントに読むのが大変です。 でも、屋外看板を設置する際に関わってくる法令については最低限のことは知っておきたいですね。この記事では以下のことについてわかりやすくまとめました。気軽に読んでください。

そもそも屋外広告物って何?

これらは全部屋外広告物になります

法令や条例では、広告用のポスターや看板のことを「屋外広告物」と呼んでいます。
屋外広告物(屋外看板)とは、文字通り常に屋外にあって、誰にでも見えるように表示されている広告物のことです。

屋外看板というと大型のものをイメージしてしまいますが、実際はA4サイズの張り紙であっても、その内容が広告であれば、立派な屋外広告物となります。

正確にいうと、下記の4つの要素をすべて満たすものが屋外広告物となります。逆にいうと、ひとつでも当てはまらないものがあれば屋外広告物ではないということです。

1. 常時又は一定期間継続して表示するもの。

cf.ビラやティッシュ配りは常時ではないので対象外となります。

2. 屋外で表示するもの。

cf.窓ガラスの内側から外に向けて貼ったものは屋内なので屋外広告物とはなりません。

3. 公衆に表示するもの。

cf.不特定多数の人に表示する場合でもコンサート会場とか映画館とかの施設内は対象外となります。

4. 看板などの工作物に掲出するもの。

cf.音声は工作物ではないので屋外広告物とはなりません。

屋外に出している看板・のぼり・ポスター・スタンド看板はもちろんですが、表札・郵便箱に書いた名前・警備会社の警備中シール・自動車の側面に書いている店の名前なども屋外広告物とみなされます。 文字・写真・イラストなどを屋外で常時表示しているものはほとんど屋外広告物と考えていいでしょう。屋外看板は屋外広告物の一部であり、 「看板」といっても法令や条例の上では対象になる「看板」は想像以上に多いことがおわかりいただけると思います。 しかし逆に屋外広告物の定義は広く曖昧なので、 抜け穴を探す広告主もいるんですよね。繁華街でよく見かける「看板持ち」は、人間が持っている上、常時継続して表示しているわけではないので屋外広告物に該当せず、 歩行者の邪魔になっていようと屋外広告物には該当しないということです。極端にいうと、どんなに派手でどんなにうるさい(音声)広告も屋外広告物に該当しなければ合法ということになってしまうのです。 しかし、そんな迷惑広告を続けていたら企業イメージがどうなるかくらいわかりそうなものですけどね。コンプライアンスを重視しなければいけないのは大企業だけではなくて、 地元で商売している中小零細企業も同じです。いえ、逆に地元で商売するからこそ、コンプライアンスを意識することが必要ですよね。

屋外看板はなぜ規制されるのか?

さて、今まで述べたように屋外広告物(屋外看板)はあなたが好きな場所に掲示できるわけではありません。それはなぜかというと、「屋外広告物法」という法律があるからです。 この法律をもとに県や市が屋外広告物に関する規制を条例で制定しているのです。これら法律や条例のポイントは次の項で説明しますが、まずは「なぜ屋外看板が規制されるようになったのか?」その背景を見ておきましょう。

現在、屋外看板は規制強化の方向にあります。屋外看板の規制を定める「屋外広告物法」は1949年に制定され、その後4回にわたって改正されています。直近で改正されたのが2004年のこと。 改正のたびに規制が強化されているんですね。 そもそも「屋外広告物法」が制定された目的は、ご想像の通り「美しい街の景観を維持」するためです。

もうひとつ、地上から高い位置に設置された看板が落下して通行人にケガが出ないようにという公害予防の目的もありました。「屋外広告物法」が制定された昭和24年といえば、 第二次世界大戦が終了し、GHQによる5年間の占領から脱出しようという時期です。

1949年の1月には戦後3回目の総選挙が行われるのですが、その年の冒頭でGHQのマッカーサーがこんなことを述べています。 「日本の民主化は終了し、今年は経済の安定に取り組む年になる」この時期、アジアでは中華人民共和国が誕生し、朝鮮民主主義人民共和国、ベトナムなど共産主義が台頭していました。 アメリカは日本を共産主義の防波堤にするべく、対日占領政策を転換しようとします。日本が政治、経済の自立へと進んでいった時代です。この時期にさまざまな商売が興り、街には看板が増えていったのでしょう。

このまま無秩序に看板が増えていっては、街の景観を損なったり、事故が起きるという懸念があったと考えられます。(実際に看板落下による怪我人も出たのかもしれません)こうした時代背景から制定されたのが「屋外広告物法」でした。

以降、4回の改正を繰り返してきました。 屋外広告物に関する規制は強化の方向にあると述べましたが、直近で改正された2004年の前年にある法律が制定されたことが影響しています。 その法律とは「景観法」という法律です。景観法の目的は、名前を見ればわかる通り、都市、農山漁村等の良好な景観を促進しようというものです。

一応、景観法第1条の条文を掲載しておくと、 「我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、 美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与すること」(景観法 第1条) こんな感じです。 この景観法の意向に沿う形で翌年「屋外広告物法」が大幅に改正され、屋外看板は規制強化の方向に向かいます。

つまり、屋外看板は「美しく風格のある」「良好な景観」を妨げるものという認識なのですね。 個人的には、「美しく風格のある」「良好な景観」と感じるのがどういうものかというのは 人によって全然違うだろうという気がしています。世界遺産に登録されるような自然豊かな景観を美しいと感じる人もいれば、新宿歌舞伎町のような雑然とした街並みを美しいと感じる人もいるでしょう。 どんな街並みを美しいと感じるかは各自の価値観の問題だと思うのですが、屋外広告物法での「美しい景観」とは周辺環境との「調和」を保つことのようです。

その「調和」を乱すものが「看板」であるということです。ヨーロッパのような整然とした街並みこそが最高であるという定義づけですね。日本人らしいといえばそれまでですが、 法律では屋外看板は景観を損なうものなのです。だから規制しなければならないということですね。

屋外看板(デジタルサイネージやLEDビジョン)を設置する際に気をつけなければならない法令

このような状況にある看板ですが、その規制は各県や市にゆだねられています。屋外広告物法を根拠に、それぞれの県や市の条例によって規制されているので、 各県や市によって若干の違いがあります。例えば岡山県でいうと、岡山市と倉敷市での屋外広告物に関する条例では微妙に違いがあります。

岡山市の広告物禁止地域

  1. 後楽園とその周辺や操山などの風致地区
  2. 国、県、市、で指定された重要文化財とその周囲や史跡など
  3. 高速道路の全区間
  4. 道路の植樹帯、分離帯など
  5. 岡山空港とその周囲500mい兄の区域や空港へのアクセス道(吉備新線と日応寺栢谷線)の両側各100m以内の区域
  6. 岡山駅の駅前広場
  7. 学校、図書館、公民館、美術館などの建物とその敷地

倉敷市の広告物禁止地域

  1. 後楽園とその周辺や操山などの風致地区
  2. 国、県、市、で指定された重要文化財とその周囲や史跡など
  3. 高速道路の全区間
  4. 道路の植樹帯、分離帯など
  5. 岡山空港とその周囲500mい兄の区域や空港へのアクセス道(吉備新線と日応寺栢谷線)の両側各100m以内の区域
  6. 岡山駅の駅前広場
  7. 学校、図書館、公民館、美術館などの建物とその敷地
  1. 景観地区(倉敷美観地区)、酒津風致地区など
  2. 国県市の指定文化財とその周辺
  3. 山陽自動車道・瀬戸中央自動車道の全区間、瀬戸中央自動車道・(都)金光船穂倉敷線・(都)船倉曽原線の一部区間とそれらの両側各100m以内の区域
  4. 都市公園、児童遊園
  5. 道路の植樹帯・分離帯・交通島
  6. 駅前広場(倉敷駅・新倉敷駅・児島駅・水島駅など)
  7. 公共建物(官公庁・学校・図書館・公民館・美術館・博物館・体育館・病院・公衆便所など)とその敷地
  8. 古墳、墓地、火葬場、葬祭場
  9. 社寺・教会の建物

(出典:http://www.city.kurashiki.okayama.jp/secure/20680/okugaikoukokubutu.pdf

上記のように、だいたい書いてあることは同じなのですが、微妙に違いがあります。屋外広告物を設置するときは、該当する市の条例を確認しておきましょう。

屋外看板に関して知っておきたいその他の法令

屋外看板に関する法令は「屋外広告物法」だけではありません。以下のように実にさまざまな法律・条例が関係してきます。 覚えておく必要もないですが、「屋外看板の規制っていろいろあるんだな」と思っていただければ十分です。

•著作権法

これは設置に関する法令ではありませんが、屋外用のデジタルサイネージで流すコンテンツには著作権法が関わることがあります。

•道路交通法と道路法

屋外看板は道路の路地に直接置くものは許可されません。これを規定するのが道路交通法と道路法です。 道路交通法は「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」(道路交通法第1条)を 目的としているのに対し、道路法は「路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、 もって交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進」(道路法第1条)することを目的としています。簡単にまとめると、道路交通法は道路交通の安全が目的。道路法は道路の整備や管理、保全が目的です。

•建築基準法

屋外看板に建築基準法が関係するとは大げさな気もしますが、4mを超える広告塔は建築物の屋上に設けられるものおよび土地に独立して設けられるものにかかわらず建築基準法が適用されます。 つまり確認申請が必要になるということです。このように屋外看板設置にはさまざまな法令が関係してきます。

屋外広告物法・屋外看板に関する条例に違反するとどうなる?

では、これらの屋外広告物に関する法令に違反するとどうなるのでしょうか?故意に違反するのは論外ですが、そうとは知らずに法令に違反している場合もあります。

例えば、店舗の前のガードレールに「のぼり」を設置したとか、店舗の前の電柱にA4サイズで自作したPOPを貼ったなど、これらも法令違反になります。 また、個人の所有物で自己の敷地内にある広告物も規制の対象になります。

もちろん、社会生活を営む上で最小限必要な広告については法令の適用が除外されています。これも各自治体によって違いがあるので確認が必要です。岡山市であれば、許可不要の広告物は下記で参照できます。
https://www.city.okayama.jp/jigyosha/0000009545.html

さて、許可が必要である屋外看板について、意図するかしなかは別として法令に違反してしまったらどうなるのでしょうか?
これも各自治体によって条例に差があるのですが、ほとんどの場合、罰則規定が設けられています。 例えば岡山市屋外広告物条例を確認すると第40条から第44条までが罰則規定になっています。 最も重い場合、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とあります。注意しておかなければならないのは、第43条の両罰規定。

これは何かというと、あなたの会社がある業者に依頼して屋外看板を設置したとしましょう。その業者が条例に違反する屋外看板を設置した場合、設置した業者だけではなく、広告主であるあなたの会社も罰せられるということです。 屋外看板を設置するときの業者選びは慎重にしたいですね。

もちろん、いきなりこのような罰則が科せられるわけではなく、まずは所轄の役所から改善命令が出されます。「条例に違反した屋外看板なので撤去してくださいね」という趣旨の文書がくるでしょう。 電話で指導される場合もあるかもしれません。これに対応しない場合、屋外広告物法に基づき、行政代執行の手続きなしで、市長自らが違反広告物を除去することができます。 その場合、除去に要した費用は請求されることになるでしょう。(岡山市屋外広告物条例第25条の8)

屋外看板を設置するまでの流れ

屋外広告物の設置から除却までの手続きの流れ
一般的に屋外看板を設置するまでの流れは次の通りです。

新規で屋外看板を設置するときに確認すること

上記の流れで屋外看板を設置するのですが、新たに屋外看板を設置しようとする場合、許可申請の前に下記のことを確認しておきましょう。

1. そもそも設置できる広告物なのか?

これは設置に関する法令ではありませんが、屋外用のデジタルサイネージで流すコンテンツには著作権法が関わることがあります。

2. 広告物を掲出できる地域なのか

屋外看板は道路の路地に直接置くものは許可されません。これを規定するのが道路交通法と道路法です。 道路交通法は「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」(道路交通法第1条)を 目的としているのに対し、道路法は「路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、 もって交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進」(道路法第1条)することを目的としています。簡単にまとめると、道路交通法は道路交通の安全が目的。道路法は道路の整備や管理、保全が目的です。

3. 広告物の種類が何に該当するか?


屋上広告塔広告幕工作物利用広告物立看板アーチ壁面広告置看板巻付け広告建植広告板アドバルーン広告袖看板のぼり旗袖付け広告

広告物にはさまざまな種類がありますが、設置する場所(建物)によっては広告物の扱いが変わる場合があります。 広告物の種類ごとに規制の内容が異なる場合がありますので、 詳しくは担当部署(多くの場合都市計画課)に確認してみましょう。これらの確認ができたら看板の形状・デザイン等を計画して申請しましょう。 申請から許可まではだいたい2週間くらいかかるようです。

まとめ

駅前広場や通行量の多い道路の電柱や街路樹など、ここに屋外看板を設置したい!というところがあっても、どこにでも好きなように掲出できるわけではないんですね。 コンプライアンス違反をする企業に対する風当たりは年々強くなっているように感じます。

屋外看板の設置はほとんどの場合、外部の業者に委託することになると思いますが、 本文でも述べた通り、違反広告物に対する責任は設置業者だけでなく、広告主にも課せられています。地域と共存できる事業を展開していきたいですね。


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