建設現場のデジタルサイネージは現場規模、期間や用途に合った選び方を
「建設現場にどのようなデジタルサイネージを導入するべきか?」お悩みのご担当者様より良くご相談をいただきます。今回はそのお悩みを解決するべくペンを取りました…じゃなかった、キーボードを叩くのでした。
朝礼看板や仮囲いで使用されるディスプレイはほぼ二種類。まずはLEDビジョン👇(写真ご協力:大林組様)
そしてもうひとつは液晶👇(写真ご協力:鹿島建設様)
パッと見、「何が違うの?」って感じですが、それぞれに長所と短所があります。現場に合った適切な選び方をすることがポイントです。
それではその違いについて触れていきます。
LEDビジョンと液晶ディスプレイの違い
まず知っておきたいのがLEDと液晶の違いです。「明るさ」「発光」「解像度」「反射」「適正視認距離」大きく分けるとこの5つの違いがあります。
明るさ
まずは下の写真をご覧ください。
3つのディスプレイが並んでいます。「5000cd/㎡とか700cd/㎡って何じゃ?」って感じですが、デジタルサイネージの明るさを示す単位となります。「cd/㎡」とは「カンデラ」と読み、その数値が大きいほど明るいということになります。例えばご家庭用のテレビが400-500cd/㎡程度の明るさです。
見比べると左と真ん中の画面に比べると右の画面は明らかに明るく感じます。一番右がLED、その他は液晶です。液晶の400cd/㎡と700cd/㎡の違いがイマイチ分かりづらいですが、カメラの光を絞って撮影しますとですね…
このように違いがはっきり確認できます。写真は庇の下の日陰で撮ったものですが、直射日光の当たる場所ではディスプレイの明るさによる視認性の違いがもっと顕著に表れます。要するに周りが明るい場所へディスプレイを設置する場合、ディスプレイ自体の輝度を上げてやる必要があります。
一般的に液晶は300cd/㎡~3000cd/㎡程度まで、LEDは1000cd/㎡~6000cd/㎡程度までのものが多く流通しています。屋外設置の場合は2000cd/㎡以上の明るさを推奨します。屋外でも日陰の場合、輝度を落としても視認性を確保できる可能性が高いです。室内や薄暗い場所ではテレビと同じくらいの400~500cd/㎡程度の明るさでほぼ問題ありません。
↑450cd/㎡と2500cd/㎡の違い(7月の14時の屋外)
↑500cd/㎡と700cd/㎡の違い(屋内蛍光灯下撮影)
↑350cd/㎡と700cd/㎡の違い(暗所撮影)
【ポイント】
✅太陽光の影響が強い屋外へ設置するディスプレイは、明るさの強いものにしないと見えづらい。
発光
選定に当たって発光の違いについてはそれほどポイントではありませんが、知識として知っておいても良いでしょう。LEDは自発光式です。
赤・青・緑(RGB)の3つの光源体を1セットとし、いろんな色を表現します。写真を見るとそれぞれが独立して光を放っているのがわかります。
液晶を接写してもわかりづらいのですが👇
液晶はそれ自体が発光しているわけではありません。バックライトが奥に潜んでおり、その光がカラーフィルターを通して色を表現しています。
【ポイント】
✅LEDはそれ自体が発光しているが、液晶はバックライトの光がフィルターを通ったもの。
解像度
さて、お次は解像度。いわゆるピクセルピッチの違いです。最近はテレビでも4Kとか8Kなんてのが出ていますが、ピクセルピッチは狭いほど高精細で綺麗な映像が表現できます。LEDのピクセルピッチは…
少し離れた距離でも明らかにツブツブが見えるほどです。対して液晶は👇
その「ツブ」の配置間隔が極端に狭いことがわかります。例えば液晶では問題なく見えたテキスト文字でも、
LEDで同じ文字を映してみると…
細かいテキスト文字なんかはピッチが広すぎて、LEDじゃ表現できずにつぶれてしまうんですね。なのでLEDの場合は細かい文字などを映すことが苦手です。よって図面等を共有する建設現場では4mmピッチ以下のLEDモジュール(3~4mmの防水用屋外LEDモジュール)の使用を推奨しています。※視認距離については後述します
【ポイント】
✅図面や小さな文字を映す場合は液晶の方見えやすい。
✅LEDの場合はコンテンツのテキスト文字を大きくしましょう。
反射
実はここがかなりのポイントです。特に屋外で液晶ディスプレイを考えられる際は抑えておいてください。
光の反射問題。LEDはほとんど反射がないのに比べ、液晶は置く場所によりまるで鏡のように反射してしまいます。正確に言うと表面保護ガラスの反射とも言えますが、屋外に液晶ディスプレイを置く場合は液晶面保護のため一般的に強化ガラスを用います。そのガラスの反射が厄介なんです。※保護ガラスなしの場合でも反射レベルは落ちますが、ぼちぼち反射します。
いくらディスプレイ自体の明るさを上げてやっても反射には勝てません。ちなみにこんなテストもしてみました👇
車のヘッドライトをハイビームにして、それぞれ光を当ててみます。まずはLED👇
反射の影響はあまり感じません。そして液晶👇
せっかく輝度の高い液晶ディスプレイを導入しても、反射で見えにくいと効果は半減します。設置場所の反射具合を見極めることが大切です。弊社の建設現場に納入するディスプレイには、ARコートガラス(Anti Reflection)、またはAGコートガラス(Anti Glare)を用います。
↑ARガラスですが時間や条件によっては反射します。
↑AGフィルムを貼っています。
【ポイント】
✅液晶ディスプレイを置く場合は光の反射具合に気を付けろ!
適正視認距離
小さい頃はよく「テレビは離れて見なさい!」と親に怒られたものです。この「適正視認距離」というのは前述のピクセルピッチが関係してきます。液晶の場合は近づいてもきれいに見えるのですが、LEDの場合は解像度が悪いため近づきすぎると画像がかなり粗く感じます。
この漢字、読めますか?
少し離れると…そうです「橋」という漢字だったんですね。
もっと離れてみると👇
離れるにつれあまり画像の粗さは気にならなくなりました。LEDはピッチ幅(ツブとツブに間隔)が選べます。例えばの写真は4mmピッチです。
ツブの間隔が4ミリってことなんですね。ピッチを狭くしてやるほどきれいに見えるんですが、狭ければいいってもんじゃありません。私たちがご案内する際は大まかな目安として、ピッチ幅をメートルに置き換えます。
4ミリピッチの場合は最低約4メートル離れると、6ミリの場合は6メートル以上、8ミリだと8メートル以上離れて、というように、厳密には誤差がありますがざっくりの感覚としてお伝えしています。ただ、あくまで「適正視認距離」ということなので、近づいたら見えないということではありません。
【ポイント】
✅LEDのピッチ幅に応じて最低適正視認距離が変わる
設置場所や用途に応じたサイネージを選びましょう
さて、LEDと液晶の違いを理解したうえで設置される場所や目的によって、適切なものを選ぶ必要があることがわかりました。ではどのような選定をすればよいでしょう?目的別にご案内します。
朝礼看板
屋外朝礼会場にはLEDビジョンがおすすめです。朝礼参加者の人数や規模に応じてビジョンの大きさを決定します。LEDビジョンは1辺が数10センチ程度のモジュールを、タイルを敷き詰めるように並べていくことにより構成されます。なので規模に合わせた大きさのビジョンを簡単に作ることができます。
朝礼看板と参加者の間にはある程度の距離があります。列の後ろにいる参加者にも見えやすいよう、明るく反射のない大きなビジョンの設置が求められます。直射日光の影響が少なく、反射が起こりにくい場所で参加人数が少ない場合であれば大きめの液晶ディスプレイでもよいでしょう。
仮囲い用ディスプレイ
近隣住民の方の理解を得るために設置する仮囲いビジョン。こちらの選定はどうでしょう?ここでおすすめしたいのは、視聴対象者とディスプレイの距離です。仮囲いと歩道の間に距離がある場合、視認性の高さが求められます。その場合遠くの通行者でも一目で理解できるようにするため、視認性の高いLEDをおすすめします。そしてコンテンツの文字は読みやすいように大きくすることです。
駅近くなどある程度視聴者が近距離で見る可能性がある仮囲いディスプレイの場合は、細かい情報を一度に掲示しても見やすい液晶ディスプレイがおすすめです。近くによって見るコンテンツには適しているといえます。
近距離、中距離の両方が考えられる場合は、LEDビジョンで不特定多数の方にアピールし、興味を持ってもらったうえで液晶の近くに誘導し、細かい情報は液晶で見てもらうという方法が良いかもしてません。
まとめ
かなりLEDビジョン推しの記事となってしまいましたが、やはりサイネージにおける情報掲示は「見やすくてナンボ」ということが言えます。家でテレビを見る場合は綺麗さが求められますが、基本的に建設現場に設置するサイネージの場合は、人が何時間も見続けるということはありません。なので画質よりも、南向きの太陽光にも負けない視認性の良さを重視したいところです。参考にしていただけますと幸いです。
※協力:Team MF&Kawasaki様 記事内の写真に出てくる画面に表示されている映像コンテンツの使用にご協力いただきました。
建設現場でのデジタルサイネージのご相談は姉妹会社の運営する「モニたろう」にご相談ください。
建設現場で使われるデジタルサイネージを提供しています。