開催迫る大阪万博
2025年4月13日、いよいよ大阪万博が開催されます。会場は大阪湾に浮かぶ人工島の夢洲です。161カ国がパビリオンを出展するビッグイベントです。日本国内はもちろん、海外からの来訪者も多数予想されており、その経済効果は2.9兆円とも言われています。
日本では現在までに5つの万博が行われました。初めての国内開催は1970年の「日本万国博覧会(大阪)」です。この時の参加国は77カ国。総入場者数は約6400万人に及びました。その後「沖縄国際海洋博覧会(沖縄)」、「国際科学技術博覧会(筑波)」、「国際花と緑の博覧会(大阪)」、「2005年日本国際博覧会(愛知)」が開催されました。
大阪では実に3回目の万博開催となり、各国最新の技術や食文化など、様々な分野の展示物、体験に大きな期待が寄せられています。
昔の万博はこうだった
時代の流れと技術の進歩により、万博のパビリオン構成も変化してきました。1970年の万博はアナログ的な展示がほとんどで、パンフレットを片手に展示物を見る光景がよくありました。
科学をテーマとした1985年のつくば万博では、デジタル製品の展示物が増加しました。富士通のパビリオンで配布される「3Dメガネ」が話題になりました。今となっては古き良き時代と感じますが、当時はこれが最新の技術だったのです。
1990年代後半になるとインターネットが爆発的に普及し始め、著しい技術の進化が進みます。2005年の愛知万博では「リアルとバーチャル」による展示が話題を呼びました。立体映像や大画面での映像が人気となりました。IT技術を活用したパビリオンが増えたことも特徴です。リアルな展示物とバーチャルな世界を体験できる、ハイブリッドな博覧会が誕生したのです。
万博とデジタルサイネージ
近年の万博では、多くのパビリオンで何かしらの「デジタルサイネージ」を活用することがほとんどです。デジタルサイネージとは映像を映し出すシステムのことで、主にその画面のことを指します。例えばテレビのような液晶画面や大型のLEDビジョン、プロジェクションマッピングなどのことです。
万博におけるデジタルサイネージの利用は「展示物として」、「案内・情報提供として」の2パターンに分けることができます。
1.展示物としてのデジタルサイネージ活用とは?
映像や画像コンテンツで伝えたいことを表現したり、パビリオン内の雰囲気を演出するためにデジタルサイネージを利用します。多くの来場者が見込める万博会場では、会場内の誰でも見ることができる巨大画面を設置することが一般的です。
パビリオン内の紹介を誰でも簡単に理解することができます。また、パビリオンのイメージに沿った動画(海中や森の中、世界遺産など)を流せば、まるで自分がそこにいるように感じることができます。巨大な画面を作るには、液晶ディスプレイを連結する場合とLEDビジョンで仕上げる2つの方法があります。
左の画像は液晶画面を連結したイメージで、右側がLEDビジョンのイメージです。液晶画面の場合は屋内設置にしか対応せず、大きさが20平米を超えると設置時や故障時のリスクが高まります。「屋内設置・20㎡以下」の条件なら設置に問題はありません。ただし画面連結部にベゼルラインが生じてしまうことがデメリットです。
画面の大きさが20平米を超える場合や屋外に設置するケースではLEDビジョンを使用します。LEDビジョンは液晶に比べて解像度が落ちることがデメリットですが、画面を大きくすることによりドットの数が増え、高解像度の映像を流すことができます。太陽光に負けない画面の明るさがあることも特徴です。パビリオンのメインモニターとして、どちらかの大画面を用意することが多くなっています。
パビリオン内の各ブースには展示物の説明用に使用したり、タッチパネル式でインタラクティブなデジタルサイネージを配置します。昔はカタログやパンプレットの配布、説明パネルを使用していましたが、デジタルサイネージの利用でより分かりやすく、ペーパーレスにもつながるようになりました。
プロジェクターを利用して、空間演出を行うパターンもあります。しかしこの場合は室内を薄暗くする必要があり、エンターテイメントに重きを置いた方法になります。
2.案内・情報提供としてのデジタルサイネージとは?
膨大な敷地内で開催される万博では、案内表示やその他の情報提供を行う必要があります。例えば天気予報や近隣の交通情報、場内のマップやイベント情報などです。情報提供様にデジタルサイネージを利用することで様々なメリットが生まれます。
まず、デジタルサイネージで情報提供を行う最大のメリットは「リアルタイム更新」ができることです。通信を利用して、容易にコンテンツの更新が行えるのです。気象情報や交通情報、緊急速報などをすぐに表示することができます。
来場者に訪れるかもしれないトラブルを未然に防ぎ、安心・安全に万博を楽しんでもらうことができます。また、場内のマップを表示すればスムーズな案内が可能になります。目玉のイベント開催情報を流せば、より多くのイベント来場者が見込めます。
デジタル技術の進歩と未来の万博
2054年を舞台とした映画「マイノリティ・リポート」のようなデジタル空間で、生活やビジネスを行う未来はそう遠くないかもしれません。2025年の大阪万博でも多数の新技術が披露され、バーチャルな世界がもっと広がっていくと予想されます。
今後の万博においてもこの流れは続いていくものと予想され、それに伴い様々なデジタルサイネージが活躍するでしょう。インターネットやデジタル技術の普及により、以前よりも開催の意義が落ちてきたという意見もある万博ですが、やはり本物を自分の目で見て、体験するということ以外に真実はありません。
パビリオンではリアルとバーチャルを上手く融合させることがテーマになるでしょう。また、我々はバーチャルの世界に満足することなく、真実を求めて万博に足を運ぶのも良いのではないでしょうか?本物を体験した者にしか無い感動、喜びがきっとあると思うのです。